品種登録とは?制度の内容をわかりやすく解説

品種登録とは?制度の内容をわかりやすく解説

品種登録とは、新たに開発した種苗を農林水産省に登録する制度です。
登録後には育成者権や独占的な使用権が与えられ、許諾なしでの栽培や増殖を防ぎます。

しかし、品種登録制度の概要や流れを今ひとつ理解できていない方も多いのではないでしょうか。

本記事では、品種登録制度の内容をわかりやすく解説します。
品種登録を検討中の方はもちろん、制度について詳しく知りたい方も、ぜひ参考にしてください。

品種登録制度とは?

品種登録とは、花や農作物などの新品種を開発した者に独占的な権利を与え、品種と育成者を守る制度です。

新たに育成した品種を登録するには、種苗法で定められた一定の要件を満たして農林水産省に願書を提出する必要があります。

 

種苗法に基づいた制度

新品種の育成には、多くの時間と費用、労力を費やします。
たとえ多くの時間をかけたとしても必ず開発が成功する保証はなく、確実に成果を得られるものではありません。

しかし、一たび新品種の種苗を手に入れれば、膨大な時間や費用、労力をかけずとも、簡単に増殖できてしまいます。

これでは育成者の努力が報われないどころか、農林水産業の発展もままならなくなります。

そこで、育成者の権利や利益を保護するために「種苗法」という法律が制定されました。
人の知的活動によって生み出された成果を守る知的財産として、登録品種の利用や販売を独占できる効力があります。

品種登録制度は、この種苗法に基づいた制度です。

 

育成者の権利が保護される

品種登録すると、育成者に対して「育成者権」が付与されます。
育成者権を持つ者は、登録品種を独占的に使用できるようになります。

反対に育成者権を持たない者は、育成者の許諾を得ないまま登録品種を増殖したり、海外へ持ち出したり、他人に譲渡・販売したりできません。
無断で使用した際には損害賠償請求されるだけでなく、刑事罰の対象になる恐れもあります。

また、育成者権には存続期間というものがあり、権利の効力が及ぶ期間が以下のように定められています。

育成者権の存続期間
一般的な植物 25年
本木性植物
(果樹・林木・鑑賞樹など)
30年

期間が満了した際には、登録品種を誰でも自由に使用できるようになります。

ただし、品種登録すれば、存続期間が上限まで適用されるわけではありません。
育成者権を保持し続けるには登録料を毎年支払う必要がありますが、この登録料を支払わなかった場合、育成者権は消滅します。

他にも、種苗法で定められた要件を満たしていなかったり、登録後に植物の特性が保持されていなかったりした場合も権利を剥奪されるので注意してください。

 

品種登録の要件

品種登録するには、種苗法で定められた以下の要件をクリアする必要があります。一つでも満たせない場合は願書が受理されないので注意してください。

要件の種類 概要
区別性 既存の品種と、重要な形質のすべてもしくは一部が明確に区別できるか
均一性 同じ時期に育成した品種の特性が、全個体において類似しているか
安定性 品種を繰り返し増殖させた後でも、全個体の特性が変わらないか
未譲渡性 出願品種の種苗や収穫物を業として譲渡していないか
名称の適切性 品種登録時の名称が不適切なものでないか

とくに、未譲渡性の項目には要注意です。弊社シフトアップに依頼されたお客様の中には、未譲渡性の要件を満たせず、登録を断念される方も少なくありません。

細かな決まりについては以下の記事で解説しているので、ぜひ併せてお読みください。

 

品種登録の流れ

品種登録の流れ

続いて、品種登録の流れをざっくり解説します。
出願から登録までの具体的な手順は以下のとおりです。

  1. 出願
  2. 出願公表
  3. 仮保護
  4. 審査
  5. 審査特性の通知
  6. 登録完了

それぞれ見ていきましょう。

 

①出願

新品種の育成と、既存の出願・登録品種に同一の種苗がないことを確認したら、品種の名称を決めて農林水産大臣宛に願書を提出します。
出願料(1品種につき14,000円)の納付も忘れずにおこないましょう。

また、希望する方は、以下2種類の届出も同時に提出します。

  • 海外持出制限:意図しない国への持ち出しを制限できる
  • 栽培地域制限:意図しない国内地域での栽培を制限できる

これらを届け出ることで、品種登録の利用の範囲を制限できます。

 

②出願公表

出願後、願書に不備がないことが確認されたら、該当品種が出願中であることが官報(政府の出版物)に公示されます。

 

③仮保護

出願から実際に品種登録されるまでには、通常2〜3年かかります。
その期間中、出願品種を無断で使用されないように、出願者には「仮保護」という一定の権利が与えられます。

仮保護が適用されている期間に無断で出願品種の増殖や譲渡をおこなったり、種苗を海外へ持ち出したりした者がいれば、品種登録後に利用料と同程度の補償金を請求できます。

 

④審査

品種登録の要件を満たせているか確認するために、植物特性に関する審査が実施されます。
栽培試験または現地調査のいずれかの形式でおこなわれ、区別性や均一性、安定性がチェックされます。

なお特性審査を受けるにあたり、栽培試験・現地調査に係わる手数料を支払う必要があります。出願品種によって費用が異なるため、詳細は農林水産省のホームページを確認してください。
(参考:出願料・登録料・手数料一覧|農林水産省

 

⑤審査特性の通知

審査の結果、要件をクリアしていると判断されたら、品種の特性や情報に間違いがないか確認するために、「特性表」が通知されます。

出願者は、通知後から30日間以内であれば、審査特性の訂正を求めることが可能です。

 

⑥登録完了

品種の特性に問題がなければ、正式に品種登録されます。
登録にあたって登録料4,500円の納付が必要になるため、30日以内に納付しましょう。

 

品種登録制度についてよくある質問

品種登録制度についてよくある質問

最後に品種登録制度についてよくある質問に回答します。

 

品種登録制度の概要は?

品種登録制度とは、新しい品種を育成した者に独占的な権利を与える制度です。

新品種の育成には、膨大な時間と巨額の費用、労力がかかります。
しかし、一たび種苗を手に入れれば簡単に増殖できてしまうため、育成者が新品種開発にかけた数々の努力が報われなくなってしまいます。

育成者の権利を保護し、新品種の開発の促進と農林水産業界の発展を目的に、品種登録制度が設けられました。

 

一般品種と登録品種の違いは?

一般品種には、未登録の品種や在来種、品種登録の期間が消滅したものが分類されます。
流通するほとんどの品種がこれに該当し、育成者の許諾がなくても誰でも自由に使用できます。

一方の登録品種は、種苗法に基づいた基準に沿って農林水産省に登録された品種です。
育成者の許諾がなければ、増殖や譲渡、海外への持ち出しはできません。

一般品種 ・未登録の品種や在来種、品種登録の期間が消滅したもの
・育成者の許諾がなくても自由に使用できる
登録品種 ・種苗法に基づいた基準に沿って、農林水産省に登録された品種
・育成者の許諾がなければ原則使用できない

 

品種登録にかかる費用は?

品種登録にかかる費用は、大きく分けて以下の3つです。

項目 概要 費用
出願料 品種を農林水産省に出願する際にかかる費用 1品種:14,000円
登録料 品種登録・育成者権の更新料 1~9年目:4,500円/年
10年目以降:30,000円/年
審査手数料 特性審査(栽培試験・現地調査)にかかる費用 栽培試験:93,000円~
現地調査:45,000円~

(参考:出願料・登録料・手数料一覧|農林水産省

出願料と審査手数料は、出願するタイミングでのみ納付義務が生じますが、登録料は毎年支払わなければなりません。
毎年定められた期日までに納められなければ、品種登録と育成者権が消滅するため注意してください。

 

品種登録の対象となる植物は?

種苗法に基づいた品種登録の対象となる植物は以下のとおりです。

  • 栽培される種子植物
  • シダ類(ワラビ・ウラジロ・ゼンマイなど)
  • せんたい類(コケ植物)
  • 多細胞の藻類(海苔や昆布など)
  • 特定のきのこ類

 

まとめ

種苗法に基づいた品種登録をおこなうためには、制度の概要はもちろん、要件や流れの理解が必須です。本記事を参考に、品種登録についての理解を深めましょう。

また品種登録をお考えの方は、ぜひ「行政書士法人シフトアップ」へご相談ください。書類作成や出願代行、要件の確認など、育成者様の権利を守るために幅広くサポートします。

品種登録を考えている、出願代行をどこに依頼するか迷っているという方は、まずはお気軽にお問い合わせください。

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