育成者権は、品種登録名簿への登録があれば、育成者自信で保有するだけでなく、
- 譲渡
- 放棄
- 質権の設定
が可能であると種苗法に定められています。以下でそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
育成者権の譲渡
育成者権は、財産としての価値のある財産権であるため、第三者へ「譲渡」することができます。譲渡する場合は、契約書によって登録品種の「専用利用権」や「通常利用権」を第三者に与えるのが一般的です。
そして、専用利用権も通常利用権も、利用権を得た者が、さらに第三者に譲渡することが可能です。
ただし、誰に譲渡するかは育成者にとって非常に重要です。育成者が知らない間に専用利用権や通常利用権が譲渡されては困ります。
そのため、上記2つの利用権は登録品種のおおもとである育成者の承諾を得ないと譲渡できないことになっています。
加えて利用権を持つ者が第三者へ利用権を譲渡する場合であっても、その主旨の契約書作成が必須となります。
以下で専用利用権と通常利用権について見ていきましょう。
専用利用権とは
育成者権者との契約で定めた期限、地域、内容などの範囲内で独占的に業として登録品種を利用できる権利のことです。契約により専用利用権が設定されると、登録品種の利用には育成者権者でなく、専用利用権を持つ者(専用利用権者と言います)の承諾が必用になります。
ただし、「品種登録名簿」に専用利用権を設定したことが登録されなければ、その効力は発生しませんので注意が必用です。
通常利用件とは
法律や育成者との契約で定めた期限、地域、内容などの範囲内で登録品種を利用できる権利のことです。専用利用権との違いは複数の者に対して利用権を設定でき、育成者権者は通常利用権の設定後も登録品種を利用することができるところです。
通常利用権は専用利用権と違い独占的な権利ではないので、第三者が登録品種を利用しても通常利用を持つもの(通常利用権者と言います)が権利侵害を主張することはできません。
次は育成者件の放棄についてのご説明です。
育成者権の放棄
育成者権、通常利用権、専用利用権のいずれも放棄することができます。登録品種の育成者が育成者権を放棄した場合、設定されていた専用利用権・通常利用権・質権は消滅することになります。
したがって、通常利用権または専用利用者権を持っている者、質権を持っている者の承諾がないと育成者は勝手に育成者権を放棄することができないようになっています。
育成者権への質権設定
育成者権・通常利用権・専用利用権とも財産権であるため、民法に規定による「質権」を設定することができます。
育成者権に質権を付けると、契約書等で別の取り決めをした場合以外、育成者権者は登録品種を利用することができなくなります。
また、専用利用権者・通常利用権者は、育成者権者の承諾を得た場合に限って登録品種の利用権に質権を設定することができます。質権を設定すると利用権者としての権利は利用できなくなってしまいます。
専用利用権・通常利用権を設定した登録品種の育成者権を育成者が質権設定する場合、両利用権者の承諾が必要になります。