品種登録の基礎 品種登録の要件 種苗法に基づく品種登録

品種登録5つの要件|区別性、均一性、安定性、名称、未譲渡性

種苗法に基づく品種登録には5つの要件が定められています。

膨大な時間と費用、そして思いを込めて作った新品種を守るには5つの要件すべてをクリアしまければいけません。
新品種を開発した、あるいはこれから開発しようという方は是非ご確認ください。

それでは、品種登録の要件について1つずつ詳しく見ていきましょう。まずは一つ目の要件である「区別性」の解説からです。

 

品種登録の要件①|区別性

種苗法では、品種登録の要件である「区別性」について以下のように定義しています。

品種登録出願前に日本国内または外国において公然知られた他の品種と、特性の全部または一部によって明確に区別されること。

簡単にいうと、「出願品種の比較対象となる、一般に知られている品種と違うことがはっきりとわかるもの」でなければならないということです。

したがって、既に販売されており、一般的に知られている品種と明確に異なる部分のある品種でなければ品種登録はできません。

 

補足|区別性における「特性」とは

「特性」とは、各植物の重要な形質(ex.花の色)が定められ、その形質がどのような特色があるか(ex.花の色が青い)をいいます。 形質には「質的形質と量的形質」という分け方や、「形態的形質と生態的形質」という分け方があります。

なお、特性についての判断には既存品種の特性についてのデータを基にして作られた「特性表の階級値」というものを利用して判断されます。

 

品種登録の要件②|均一性

種苗法では、品種登録の要件である「均一性」について以下のように定義しています。

同一の繁殖の段階に属する植物体のすべてが特性の全部において十分に類似していること。

簡単に言うと、「同時期に栽培した出願品種の特性が、どの植物体においてもほとんど同じでないとないといけない」ということです。

「十分に類似していること」とあいまいな表現をしていますが、生き物なので全ての個体が全く同じということはありえないため、このような規定になっています。

均一性については、登録出願後に「独立行政法人種苗管理センター」が栽培試験を行い確認します。十分に類似しているかどうかは、栽培試験の結果できた出願品種に異形個体が混入する数などによって判断されます。

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品種登録の要件③|安定性

種苗法では、品種登録の要件である「安定性」について以下のように定義しています。

繰り返し繁殖させた後においても特性の全部が変化しないこと。

簡単に言うと、親から子へ、子から孫へと繁殖を繰り返しても特性が変化してはいけない、すなわち安定しているということです。

作物栽培で現在主流の育種法は「一代雑種育種法」です。自殖系統の両親を人工的に交配して得られた雑種第一代を品種として農業生産に利用する方法ですが、第二代以降は特性が変化するので利用が難しくなります。

そのため、作物栽培のために毎回供給される雑種第一代の種子による栽培で植物体の特性が変化しなければ、安定性があると考えられています。

 

品種登録の要件④|名称の適切性

種苗法に基づく品種登録をする場合、新品種に名称を付けて出願します(ex.コシヒカリなど)。この名称が不適切な場合は品種登録が受けられません。

これを「品種名称の適切性」の要件といいます。 出願品種の名称が適切かどうかは農林水産大臣が判断します。

不適切だと判断された場合は出願者に名前の変更を命じます。この命令に応じて変更すれば出願は受理されますのでご安心ください。

登録した名前は、種苗を譲渡する場合に使用するよう義務付けられています。新品種の名称はブランド化も考慮して慎重に決めるようにしましょう

 

品種名称が不適切な場合はどうなるのか

品種登録の出願をした時に付けた植物体の名称が不適切となる場合は以下のとおりです。

  1. 1つの出願品種に複数の名称が付いているとき。例えば品種登録出願時の名前と試験販売時の名前が違うときなど
  2. 他の植物体等の登録商標と同じ、または似ているとき
  3. 誤認、混同を生じる名称。例えば花の色が青くないのに「ブルー〇〇」としたり、既存品種と同じ名前を付けるなど

消費者に誤解を招くような名前や、一般的に広く知られている品種と似た名称は適切と言えないということです。品種登録されれば、25年(または30年)使用される名前なのでオリジナル性があり、記憶に残りやすい名前が良いでしょう。

 

品種名称を付けるときのルール

品種の名称をきめるときには、名づけの際に決められたルールを守らなければなりません。このルールを守って名称を決めないと農林水産省から補正が入り、品種登録の審査が遅くなってしまうため気をつけてください。

下記で具体的なルールを見ていきましょう。

 

具体的な名づけのルール

  1. 品種名称で使用できる文字は、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(アルファベット26文字)です。
  2. アラビア数字(1,2,3・・・)は、漢字等の文字と組み合わせて用いることができますが、単独では使用できません。
  3. 「-(ハイフン)」「&」は使用できます。
  4. 「№.」など、後の続くアルファベットの省略を示す「.(ドット)」は使用できます。
  5. 「。」「、」「・」「’」「, 」「/」「ローマ数字(Ⅰ、Ⅱ.Ⅲなど」カッコ「」( )等の記号は使用できません
  6. 日本への出願前に他の国に出願している場合、他の国へ出願した品種名称と同じ名称で日本に出願しなければいけません。
  7. 既に他国で出願または登録されている品種を日本で品種登録する場合、同じ品種名称を同じ綴り(アルファベット26文字を使用し、フランス語、ドイツ語等の特殊発音記号を使用している場合はアルファベットに置き換える)か、または言語の発音に従いカタカナ表記で記載すること。
  8. 日本で品種登録した品種を他のUPOV条約締結国へ出願する場合、日本へ出願した品種名称を用いること。
  9. 海外で出願した品種名称でも、日本では既に他者が登録商標として使用している場合などは品種登録できないため、別の名称でも構いません。

願書へ名称を記載するときの注意事項

開発した品種の名称が決まったあと、品種登録の願書へ名称を記載するときの注意事項は下記のとおりです。

  1. 名称が日本語の場合、フリガナ欄には名称の漢字の読み方をカタカナで記載すること。
  2. ローマ字表記欄には、名称の読みをローマ字で記載する英語等外国語をカタカナで名称として使用する場合、外国語のスペルで記載すること
  3. 出願品種の名称をローマ字で記載した場合、フリガナ欄及びローマ字表記欄の記載は不要

品種名称の適切性の要件を満たすため、出願品種の名称は慎重に調査して決めましょう。

 

品種登録の要件⑤|未譲渡性(重要です)

種苗法では、出願した登録品種の種苗を「業として」譲っていた場合、品種登録できないとされており、これを「未譲渡性」と言います。

弊社シフトアップでは、未譲渡性の要件を満たせず、泣く泣く品種登録をあきらめるお客様もいらっしゃいます。

譲渡はいつまでさかのぼるのか、何が譲渡に当たるのかなど、未譲渡性の決まりについて踏み込んでみていきましょう。

 

出願前の種苗の譲渡はいつまでさかのぼる?

どの時点までさかのぼって、業として譲った日があったかを判定するかは、種苗法で下記のように定められています。

  • 日本国内の販売については、 品種登録出願日から遡って1年以上前
  • 外国への販売は、日本での品種登録出願日から遡って4年以上前
  • 果樹等の永年性植物の場合6年以上前

「業として譲渡」したかの判断は、ご依頼者様ごとの案件で判断しますので「こんなケースは大丈夫?」という疑問があれば「行政書士法人シフトアップ」までお問い合わせください。

「品種登録出願日」とは、農林水産大臣が品種登録の願書を受け取った日(これを受理日と言います)です。願書を郵送で送った場合は、送った日や官庁に願書が届いた日でなく、願書に申請受付の印が押された日が出願日となるので注意してください。1年のさかのぼり方

 

「業として譲渡」の例外

品種登録したい植物体を「業として譲渡」しても、以下の場合は例外となり、未譲渡性の要件をクリアすることが可能です。

  1. 植物体の研究のための譲渡
  2. 加工品の譲渡
  3. 育成者が譲渡するつもりがないのに他人により譲渡されてしまった場合

なお、出願品種に譲渡があったと判断された場合は、それが自分の意思に反するものであれば、出願者の方でそれを証明しなければなりません。

 

用語の説明|業として譲渡とは?

業として譲渡」とは、繰り返し、続ける意思を持って他人に譲ることを言います。「繰り返し」となっていますが、その意思があれば1回きりの譲渡で終わっても該当することになります。

また、金銭を伴う譲渡(=販売)であったかどうか関係ありません。無償で他人に譲った場合も譲渡に該当します。

 

まとめ

品種登録の要件について確認しました。補正が入りやすいのは、名称の適切性です。名づけのルールをしっかり確認してください。

シフトアップのお客さで、満たせない確率が高いのは「未譲渡性」です。未譲渡性をクリアできているかどうかは、ご依頼者様個々の案件により判断することになります。もし、少しでも不安だなと思った方は、品種登録の専門事務所「行政書士法人シフトアップ」へお気軽にお問い合わせください。

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