種苗法に基づく品種登録

権利の消尽について詳しく解説

この記事では品種登録を行ううえで重要なキーワードになる「権利の消尽」について解説しております。品種登録をご検討中の方はぜひご覧ください。

 

権利の消尽とは?

種苗法21条 第4項で「権利の消尽」について以下のように定められています。

育成者権者、専用利用権者もしくは通常利用権者の行為または第1項各号に掲げる行為により登録品種の育成者権の効力は、その譲渡された種苗、収穫物または加工品の利用には及ばない。

 

加えて、種苗法第21条1項では、以下の場合は育成者の効力が及ばないとしています。

  1. 新品種の育成や、育成のための試験、研究で登録品種を使う場合
  2. 育成者権者以外に登録品種を育成する方法の「特許権」を持っている者がいる場合、その者が特許を取得している方法で登録品種を生産、調整、譲渡、輸出、輸入などをする場合と、そのための保管する場合(特許権が消滅した後も同様です)
  3. 上記2.の特許権を持っている者が、登録品種から収穫物を生産、譲渡、貸渡し、輸出、輸入などをする場合と、そのための保管をする場合

 

要するに、登録品種の育成者権を持っている者(育成者権者と言います)が、種苗、収穫物、加工品のいずれかを第三者に譲った場合、育成者権は消えてなくなり、譲り受けた「卸売業者」「小売業者」「農家」などが、その種苗、収穫物、加工品を販売などする場合、育成者の承諾をもらう必要はありませんよということです。

さらに登録品種の生産方法の特許権を持っている者は、育成者権者の許可を得ずに、生産や輸出入ができますとも書かれています。

※譲る場合にお金をもらったかどうかは関係ありません

ちなみに「特許権」とは、技術的な発明を独占できる権利で、有効期間は20年とされています。種苗法にもとづく育成者権の有効期間は25年(永年性の果樹等は30年)ですので、特許権の方が早く消滅しますね。

登録品種の育成方法を特許権として登録した者(特許権者と言います)は、特許権が切れても生産や輸出入ができると定められているのが疑問が残ります。育成者権より特許権の方が優遇されていると感じるのは私だけでしょうか?

これは、新品種を育成する画期的な方法が開発された場合、特許権者にその利用を促すことが農林水産業の発展に貢献できますよという考えによるものだそうです。

ここで、種苗法第21条の4項に戻ります。簡単に言うと、育成者権者が他人に譲った登録品種の種苗、収穫物、加工品に付いていた育成者権は譲った時点で消えてしまいますということです。

しかし、ここで「但し書き」が出てきます。法律にはこの「但し書き」が付き物だからやっかいです。「例外もありますよ」という意味合いですね。

内容は、育成者権の力がなくなるのは育成者権者の「意思」で登録品種を他人に譲った場合のみで、無断で第三者に増殖された種苗がお店に売られていて、それを買った場合は、その種苗には育成者権が残っているので、無断増殖した者はもちろんですが、買った人も育成者権を犯してしまうことになります。

一般消費者にとっては知らず知らずに法律を犯していることになるので怖い話ですが、無断増殖した者や、それを承知で購入する者(無断増殖を命じた者?)への対処等を視野に入れての規定と言えるでしょう。

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