品種登録における育成者権の存続期間とは?取り消されるケースも解説

品種登録の基礎

品種登録における育成者権の存続期間とは?取り消されるケースも解説

新たに育成した種苗を品種登録すると、その育成者に対して育成者権が与えられ、独占利用権や販売権を持てるようになります。

しかし、育成者権は永久に適用されるものではなく、一定の期間が定められています。

本記事では、品種登録における育成者権の存続期間について解説します。育成者権が取り消されるケースも取り上げるので、ぜひ参考にしてください。

品種登録における「育成者権の存続期間」とは?

新しく育成した種苗を品種登録すると、育成者に対して「育成者権」が付与されます。

育成者権とは、登録品種の種苗や収穫物、加工品を独占的に利用できる権利です。育成者と新品種の価値を保護することを目的に設けられました。

育成者権を持たない者は、育成者の許諾なく登録品種を利用できません。
増殖や譲渡、海外への持ち出しをおこなう際は、事前に許諾を受け、定められた利用料を支払う必要があります。

しかし、品種登録による育成者権は永続的に適用されるものではなく、効力が及ぶ期間が定められています。これがいわゆる「育成者権の存続期間」です。

一般的な植物の育成者権は品種登録から25年。果樹や材木、鑑賞樹などの本木性植物なら30年継続されます。

期間が満了すれば育成者権の効力は失われ、一般品種と同様に誰でも自由に利用できるようになります。そのため、自家増殖や譲渡、販売する場合でも、育成者からの許諾を得る必要はなくなります。

育成者権の存続期間
一般的な植物 25年
果樹や材木、鑑賞樹などの本木性植物 30年

 

品種登録の存続期間が取り消される3つのケース

品種登録の存続期間が取り消される3つのケース

品種登録をおこなうと育成者権が適用されますが、以下を満たせない場合は育成者権の存続期間中であっても取り消される可能性があります。

  • 登録料が納付されていない
  • 要件を満たせていない
  • 品種の特性が保持されていない

それぞれ見ていきましょう。

 

登録料が納付されていない

品種登録後は、毎年以下の登録料を支払う義務が発生します。

令和4年4月1日以降に出願した場合
1~9年目 4,500円/年
10年目以降 30,000円/年
令和4年3月31日以前に出願した場合
1~3年目 6,000/年
4~6年目 9,000/年
7~9年目 18,000/年
10年目以降 36,000/年
登録料の納付期限
1年目 登録日から30日以内
2年目以降 各年の登録月日

(参考:出願料・登録料・手数料一覧|農林水産省

期限までに登録料を納付しなかった場合、育成者権が取り消されるので注意してください。

ただし2年目以降は、納付期限後6ヶ月以内に、登録料に加えて同額の割増額を追納すれば、期限を過ぎてしまっても育成者権を維持できます。

なお、農林水産省から納付の催促通知はありません。
納付忘れによる登録取り消しが心配な方は、複数年分を一括して納付することも可能なので、ぜひ活用してみてください。

一括納付の納品書は、農林水産省品種登録ホームページで作成可能です。

 

要件を満たせていない

登録後に品種登録の要件を満たせなくなった際には、育成者権が取り消されます。

また、要件に違反して登録されたことが判明した場合も同様です。

それどころか、虚偽の申告によって品種登録を受けたとして、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される恐れがあるため注意しましょう。
(参考:種苗法 第四章 第六十八条|e-Gov法令検索

 

品種の特性が保持されていない

品種登録後に品種の特性が保持できていないと判断された場合も、育成者権は取り消されます。

具体的には、以下のようなケースが該当します。

  • 親から子、子から孫へ繰り返し繁殖させた際に、品種の特性が変化してしまった
  • 他の品種とはっきり区別できなくなった
  • 同時期に栽培した出願品種の特性がそれぞれ全く異なってしまった

 

品種登録の期間についてよくある質問

品種登録の期間についてよくある質問

最後に、品種登録の期間にまつわる質問に回答します。
育成者権の存続期間以外の質問も取り上げているので、ぜひ参考にしてください。

 

Q1 品種登録までにかかる期間は?

出願から登録までにかかる期間は、2〜3年程度です。

登録を待つ期間中は育成者権が適用されないため、種苗を無断で増殖されたり、譲渡されたりするリスクが高まります。

そのような事態を避けるために、出願公表から登録までの間、出願者と新品種を保護する制度(仮保護)が与えられます。

 

Q2 品種登録の仮保護期間とは?

仮保護とは、出願公表から登録までの間に、種苗を無断で使用されないよう、一定の期間に限り新品種を知的財産として保護する制度です。

仮保護が適用されている期間中に、種苗の無断増殖や譲渡、販売をおこなう者がいた場合、出願者が警告書を出すことで、品種登録後に利用料を請求できます。

 

Q3 育成者権の存続期間が過ぎた種苗はどうなるの?

育成者権の存続期間が満了になったり、育成者が権利を放棄したりした場合は、一般品種と同じように扱われます。

自家増殖や他人に譲渡しても問題ありません。誰でも自由に使用できるようになります。

 

まとめ

新たに育成した種苗を品種登録すると、その育成者に対して育成者権が付与されます。

育成者権には一定の存続期間が定められており、原則として期間満了までは効力が及びます。

しかし、登録料の納付を忘れたり、要件や品種の特性が保持できていなかったりする場合は、登録が取り消される恐れも。

品種登録出願をおこなう際は、育成者権の存続期間への理解が必要不可欠です。本記事を参考に知識を深めましょう。

また、品種登録の出願代行を検討している方は、弊社シフトアップへご相談ください。書類の作成から出願まで、幅広くサポートいたします。

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